第149章

高橋隆一は片手でハンドルを握り、一瞬の気の緩みで前の車にぶつかりそうになった。

「高木さん、まず救急車を呼んで、それから位置を送ってください。すぐに行く」

電話越しに、高木さんの声が震えているのが聞こえた。もう恐怖で正気を失いかけている。高橋隆一はあちら側の状況がどうなっているのか想像もできず、詳しく尋ねる勇気もなかった。彼にできることは、心を落ち着かせてこの事態に冷静に対処することだけだった。

高木さんから送られてきた住所を受け取るとすぐに車を転回させ、現場へ向かった。途中、何回赤信号を無視したかわからない。

事故現場はすでに警察によって規制され、パトカーや救急車が次々と到着してい...