第36章

渡辺美代にとって、井上雄太はまさに天からの救い主だった。井上雄太を見た瞬間、渡辺美代はまるでノミのようにソファから跳ね上がり、ドアの隙間からすり抜けていった。

しかし、高橋隆一にとって、井上雄太は不運を象徴している疫病神でしかなかった。

「いい知らせ?」高橋隆一は眉を少し上げ、心の中の苛立ちが好奇心に取って代わられた。「話してみろ」

井上雄太はテーブルに向かいながら興奮気味に言った。「さっき千夏の情報を手に入れたんだ。彼女は今、京市にいる!しかも彼女のメールアドレスも手に入れたから、準備ができたらすぐにメールを送れるよ」

「千夏?」高橋隆一の目に一瞬の驚きが走り、すぐに冷静さを取り戻...