第73話

開けた野原の向こうで、私がよく知っている黒い車が空っぽの道路を通り過ぎていった。他に車や人の気配はなかった。

そして一台のトラックが野原を猛スピードで駆け抜け、その車に向かって直進していった。

私は緊張した。心拍数が急上昇した。止めなければ。

でも名前を叫ぼうと口を開こうとしても、体が動かなかった。目を開けようとしても動かず、パニックが襲ってきた。

だめ!

私はトラックが全速力で車に近づいていくのを見ていた。このままではぶつかる!

それを止めなければという焦りが内側から湧き上がり、落ち着かなくなった。動きたかったけど、体が麻痺したかのように、どれだけ望んでも動けなかった。

叫びた...