彼女は気晴らしだった

カスピアンの咆哮は何マイルにもわたって木霊した。

彼は可能な限り匂いを追ったが、彼女のそれを覆い隠す他の匂いがあまりにも多すぎた。人の姿へと転じ、無防備な裸体を世界に晒す。

カスピアンの世界は、今まさに崩れ落ちようとしていた。「彼女を見つけ出せ」そこに座したまま、彼は唸るように命じた。

王のあまりに静かな様にむしろ恐怖を覚え、戦士たちは即座に行動を開始した。ほとんどの雄は、己の番いが行方不明になれば理性を失うものだ。だが、これは王。嵐の前の静けさそのものであった。

他の者たちが彼女の匂いを再び捉えようと捜索する間、彼はずっとその場に立ち尽くしていた。

ゲイブが宮殿との通信回復を試みて...