第163話

バジルは翌朝、朝食前に出発の準備を整えていた。約束通り、アドルフは朝食を食べて別れを告げるだけの時間しか彼に与えなかった。アイリーンが彼をぎゅっと抱きしめたことに、彼は驚いた。

「随分と大きくなったわね」と彼女は言ってから身を引き、にっこりと笑った。「やっぱりレイモンドの血を受け継いでいるようね」

彼は薄く微笑んでから、レイヴンから食料の入った袋を受け取り、もう一度抱きしめられた。ヘンリーは彼の肩を叩いた。

「またすぐに会おう、バジル」

バジルは同意しなかったが、彼らの好意を受け入れ、食料を鞍袋に入れた。アドルフが最後に彼に別れを告げた。彼をきつく抱きしめ、バジルが国境へ向かった時に父...