第53話

「陛下があんなに幸せそうな姿を見たのは初めてかもしれない」バジルは眉をひそめ、その声がシャゼルのものだと認識した。「運が良ければ、今日中に宮廷書記官に発表文書の起草を依頼できるだろう」

「頑張ってね、従兄弟。宮廷裁縫師がこの任務に対応できることを願うよ!これほど早く別の結婚式の装飾をするなんて、大混乱になるだろうね!」

二人は笑い、足音が遠ざかっていった。別の結婚式?父が結婚するのか?誰と?それよりも悪いことに、シャゼルには話していたのか?自分はどうなんだ?彼は父の息子なのに、父が結婚することを最初に知るべきだったのに!

彼は拳を握りしめた。アドルフがシャゼル以上に信頼している人はいない...