第60話

私の腕はハドリアンの首をきつく締め付け、足は彼の腰にしっかりと巻きついていた。頭は彼の鎖骨に押し付けられ、頬を伝って涙がバケツのように流れ落ちていく。

暗闇のトンネルを通して、衛兵たちの叫び声が聞こえ、彼らが私たちに向かって走ってくる姿が見える。私を背負っているにもかかわらず、ハドリアンは彼らより速い。

確か私たちは反対側から来たはずだが、彼は逆方向へ懸命に走り続ける。ハドリアンは光から完全に隠れた暗い角へと曲がった。私の背中が冷たいレンガの壁に押し付けられ、ハドリアンが密着してくる。彼の胸が私の肺から空気を押し出し、温かい体重が私の体に圧し掛かる。

ハドリアンはじっと動かず、衛兵たちの...