第72話

ハドリアン

二本目のボトルを置いた途端に倒れてしまう。テーブルの上でガチャンと音を立て、残りのわずかな液体が木の表面に広がる。空のボトルをまっすぐに立てようとするが、視界がぼやけてうまくいかない。

席から立ち上がって別のボトルを取ろうとするが、代わりにテーブル全体を倒しそうになる。両手でなんとか自分とテーブルを支える。自分の手を見下ろすと、目の前でぼやけていく。

酒はエマのことを忘れさせるという役目は果たせていないが、私の身体の協調性を奪うという点では素晴らしい仕事をしている。ガイウスが空のボトルを透明な液体の入ったグラスと取り替える。

「これは何だよ?」私はもごもごと言い、声が引き伸...