第166話

エラ

部屋を出た後、私は宮殿のシェフが哀れんでくれることを願って、こっそりキッチンへと向かった。お腹はひどく鳴っていて、めまいがするほどの空腹感に襲われていたけど、今一番避けたいのは人と交流することだった。家族は大好きだし、ガブリエル王も日に日に好感を持てるようになってきているけど、笑顔を装ってシンクレアとの関係史上最大の喧嘩をしていないふりをするなんて、本当に耐え難い。

なぜか今回の喧嘩は、これまでのどれよりもずっと深刻に感じる。確かに、リディアの暴行未遂や偽の妊娠騒動も乗り越えてきたし、シンクレアの過保護さや私の反抗、お互いのコミュニケーション不足についても数え切れないほどの小さな戦い...