第55話

シンクレア

リディアを追いかけるのにそれほど時間はかからなかった。エラに彼女の匂いを嗅ぎつけてからは、フェア会場を通って彼女を追跡するのは簡単だった。祝宴パビリオンを出て、きらめく灯りの中を進み、ついに雪の迷路の近くの屋台の前で彼女を見つけた。彼女はホットワインの列に並んでいて、最後に会ったときと全く同じ姿だった。

心の糸が引っ張られる感覚を、私たちの絆が狼を刺激する感覚を待った。エラに対してするように、頭の中で「俺のもの」と唱える声を。でも何も起こらなかった。彼女を求めたいとも、近づきたいとも思わない。もし彼女がエラと私の子に関わろうとしていなければ、近づくことすら考えなかっただろう。こ...