第658話

「気をつけて!」

ロクサーヌは前回ここで起こした事故を思い出し、頬を紅潮させた。

3人の子供たちは振り返ることなく手を振り、波に向かって駆け出した。

ロクサーヌは足早に歩き、子供たちに追いついた。

「ママ、とっても綺麗!」

エステラはロクサーヌの手を掴んで寄り添った。小さな顔が驚嘆の表情で輝いていた。

前回の温泉リゾートへの休暇中には花火大会があり、その結果、ビーチは人で溢れかえり、子供たちはビーチで遊ぶ機会を得られなかった。

今、周囲は静かで、ビーチに打ち寄せる波の音だけが聞こえていた。

幼く元気いっぱいな子供たちでさえ、穏やかな波の前では静かにリラックスしたくなるのを抑えられなかった。

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