第55章

この道中、古城美雪は北島神人と並んで座りながらも、ずっと窓の外を眺めたまま、彼に一瞥も向けなかった。

全身から彼に対する拒絶感が滲み出ていた。

北島神人は墨のような黒い瞳で古城美雪を見遣り、何度か声をかけようとしたが、どうしても口が開けなかった。

北島一夫のプライベートヴィラはA市の月見湾に位置し、四方を山に囲まれ、静寂で清らかな雰囲気の中、大隠は市に隠れるといった趣があった。

「おじいさん!会いに来ましたよ!」

古城美雪は玄関に入るなり、暗い表情を一掃し、明るい笑顔は三日月のように、澄んだ声はウグイスのさえずりのようだった。

実は彼女は腕輪のことで内心不安を感じ、長い間心の準備...