第59章

この瞬間、TZホテル専務の執務室も重苦しい空気に包まれていた。

古城美雪は掃き出し窓に背を向け、両手を後ろで組んで立っていた。しなやかで清楚な佇まいからは、権力者特有の圧倒的な威厳が放たれていた。

「誰があのビデオを流出させるよう指示したの?」

「社会的な議論を巻き起こせるものをとおっしゃったので……」

小林翔は彼女の背後に直立不動で立ち、表情は暗く沈んでいた。

「小林翔、私の秘書として、また幼い頃から共に育った仲として、私が何を最も嫌うか分かっているはずでしょう!」

古城美雪はゆっくりと振り返った。「あなたは私の仕事を手伝いながらも、私用を混ぜているわ。あなたの算段は見透かされ...