第72章

北島神人は染まった薄い唇を歯で軽く噛み、頭痛が襲いかかると同時に、酔いも一気に覚めた。

女性に自分から口づけをしたことがなかった。

たった二度だけ、金崎恵が自分から唇を寄せてきたが、ただ彼女に唇の端に軽く触れさせただけだった。

まさか今回、北島美雪の唇に与えた狂気が、洪水のように、止められなくなるとは思いもしなかった。

彼自身も理解できなかった。

「今夜は飲みすぎた。ずっとあまり正気じゃなかったんだ」

北島神人は力なく体を後ろに倒し、疼く眉間を摘みながら言った。「これからはこんなに飲むべきじゃない。簡単に問題を起こしてしまう」

「ふざけるな!お前は酔った勢いで女に手を出しただけ...