第12章

数日後の夜、水原恵子はムードのある西洋料理店で婚活相手を待っていた。

正直なところ、彼女は大学教授に対して良い印象を持っていなかった。今日来たのは単なる形式上のことで、そのため彼女は入念に対策を練っていた。

七時ちょうどに、グレーのスラックスに白いシャツ、金縁の眼鏡をかけた男性が水原恵子の前に座った。

「はじめまして、松本悟と申します。三十一歳、地元出身で、現在Ｎ大学で教鞭を取っています」相手の挨拶はシンプルで簡潔だった。

水原恵子は相手を二、三度眺め、顎を上げながら言った。

「いくつか質問があるんですけど」

目の前の人物は温厚で上品で、優雅な学者の雰囲気を漂わせていた。変な人で...