第20章

今回も、エレベーターの前には人だかりができていた。

仕方なく、水原恵子は遅刻しないよう、また貨物エレベーターに乗ることにした。

今回はまだマシで、貨物エレベーターには荷物が載っていなかった。

フロアの数字を押すと、ドアが閉まりかけた時だった。

黒いコートを着た人影が突然エレベーターに乗り込んできた。

彼を見た水原恵子は眉をひそめ、心の中で自分の不運を嘆いた。どうしてまた彼なの?社長という立場の人間が、わざわざ貨物エレベーターに乗る必要がどこにある?もしかして故意?

佐藤和也は彼女の顰め面をじっと見つめ、磁性を帯びた声で言った。

「私を見たくないのか?」

「別にそんなことはあり...