第23章

佐藤和也の言葉に水原恵子は眉をひそめた。彼は熱い芋を彼女の手の平に置いたようなものだった。この男の腹立たしいところは、もし彼女が結婚に同意しなければ、子供を産む可能性がなくなること。結局、子供を殺す刑執行人は彼女自身になってしまうのだ。

水原恵子はプライドと気骨を重んじる人間だったが、自分の子供の命の前では、当然後者を選んだ。

視界に入ってきた市役所を見上げ、水原恵子は佐藤和也の方を向いて言った。

「この契約書の最後の条項と第四条には同意できないわ。子供の親権は私が保持したい。あなたの会社で働いているのに、佐藤奥さんというレッテルを貼られたら、本当に一日も平穏に過ごせないわ」

彼女は...