第38章

この日から水原恵子のつわりが始まった。しかもかなり重く、ほとんど食べたものをすべて吐き出すほどで、少しでも刺激のある匂いや濃厚な香りを嗅ぐと、何もかも吐き出してしまう状態だった。数日経つと、すっかり元気をなくし、痩せてしまっていた。

その日の午前中、高橋課長が水原恵子に書類を渡して指示した。

「これは先月の財務報告書だ。佐藤社長が待っているから、すぐに届けてくれ!」

佐藤和也に報告書を持っていくと聞いて、水原恵子は眉をひそめ、心の中で少し抵抗を感じた。今はまだ彼に会いたくなかった。

水原恵子が躊躇しているのを見て、高橋健太は眉をひそめて言った。

「これは簡単な仕事だよ。君のことを考...