章 257

彼は紙に何が書かれているのか知らないはずなのに、スラスラと記入を終え、不思議に思うこともなく、紙を再びその人物に手渡した。

その人は立ち上がり、一言も発せずに廊下へ向かって歩き始めた。林隽はわけもわからず、後を追った。

なんて見覚えのある流れだろう、と彼は茫然と思った。

まるで見たことのある映画のように。彼は記憶力がいいから、ひとつひとつの場面をすぐに覚えるのに、この先は何だろう、それは…

機械的に考えていても、自分が何をしているのか思い出せない。目の前の廊下は果てしなく続き、両側には同じような扉が並んでいた。

どの扉に入るべきなのか?

彼は前を行く人物についてただ歩き続け、心は麻痺から恐怖へ...