章 272

彼は服の中に顔を埋めて匂いを嗅いだ後、首輪を口にくわえた。

眠れないまま横になっていると、五時半になってようやく車の音が聞こえてきた。急いでケージまで這って行き首輪を戻し、また元の場所に戻った。服を掛けようとしたが、これは沈知辞の服だし、こっそり取ったのだから、隠さない方がいいだろうと思い直した。

彼は服を抱えたまま入り口に跪き、少し恐る恐る待っていた。

ドアの鍵がカチャッと開く音がした。林隽は頭を下げたまま、沈知辞の顔に一瞬驚きの色が浮かんだのに気づかなかった。沈知辞はドアを閉め、しゃがみ込んで彼の腕から服を引き抜いた。何も聞かず叱りもせず、ただハンガーに戻してリビングに入っていった。

林隽...