章 279

秦悦は穏やかな笑みを浮かべながら、振り向いて林川に言った。「小川、大丈夫よ、安心して。誰もあなたを責めたりしないわ。ただ寝る場所が変わるだけ、大したことじゃないわ」

その言葉には、林川への暗黙の注意が含まれていた。

胸の高鳴りを抑えきれないまま、林川は秦悦と張平の部屋に足を踏み入れた。部屋の中は温かみのある雰囲気で整えられ、空気中には爽やかな香りが漂っていた。これからしばらくの間、ここが林川の居場所になるのだ。

深呼吸をすると、その香りに陶酔し、興奮で体が小刻みに震えた。

秦悦の前では常に緊張気味だった林川は、部屋に入ったものの何をすればいいのか分からず、ただぼんやりと立ち尽くしていた...