章 608

林川は全力を込めて前に飛びかかり、両手で狼犬の首を抱き締めると、力を入れて引っ張り、犬もろとも地面に転がった。

狼犬の力はとても強く、特に野性が刺激されると、故郷ではこういう犬が猪と戦えるほどだ。林川は片手で犬の首を押さえつけていたが、犬は首を傾けて激しく吠え、林川に噛みつこうとしている。

血に飢えた大きな口が林川の首に向かって襲いかかってくるのを見て、林川は反射的に顔をそらし、手にしていたナイフを狼犬の腹に「ぷすぷす」と七、八回突き刺した。

その瞬間、体中から巨大な力が湧き出てきた。完全に恐怖に支配されていた。

新鮮な血が林川の服を真っ赤に染め、ナイフを狼犬の腹から引き抜くと、真っ赤な血が飛...