章 612

バン!

山頂に轟く銃声が耳をつんざき、旭兄が耳を押さえながら悲鳴をあげた。その隙に三爺は地面から包丁を拾い上げ、逆手に持って旭兄の顔めがけて振り下ろした。旭兄は自分の顔に向かって落ちてくる包丁をじっと見つめ、表情一つ変えることなく、異常なほど男らしい態度を崩さなかった。

次の瞬間、予想していた痛みは訪れず、血が林川の手の隙間からゆっくりと滴り落ち、ちょうど旭兄の顔に降りかかった。旭兄は複雑な表情を浮かべ、しっかりと握られた包丁をぼんやりと見つめていた。

手のひらから心を刺すような痛みが走り、林川は歯を食いしばりながら刃をしっかりと掴んでいた。

旭兄は林川を深く見つめ、地面から立ち上がると...