章 540

座るとお腹の肉が折り重なり、まるで妊婦のような膨らみを見せていた。

張冕の前に立っているその男も、同じように太り気味だった。

顔中に生え揃った顎髭が特徴的な、この男こそ張冕の手下である暴力団のリーダー「狂犬」だった。

「張董事、これは本当に小刀のせいじゃありませんよ。三爺が自ら出てくるとは思いもしませんでした!」狂犬の心の中にも憤りがこみ上げていた。

元々この誘拐は非常に簡単な仕事のはずだった。今日の鄭秋菊は外出する際、運転手すら連れていなかったのだから。

もしあの運転手がずっと付いていたなら、狂犬たちも少し警戒していただろう。

結局のところ、あの運転手は鄭伊健の側近の中でもかなりの実力者だっ...