章 56

「これは一目瞭然だ。一瞬のことだったが、その出稼ぎ労働者の頭上に黒い気が天辺に向かって昇っているのが見えた。闇に潜むやつらがまた手を出したのだ。それも私たちの目の前で、こんなにも傲慢に。怒らずにいられるだろうか」

突然の事態に現場は一瞬にして混乱に陥った。道術の使い手たちは驚きの声を上げ、一人一人が恐怖の表情を浮かべていた。だがそんな中でも、私は出稼ぎ労働者の頭上にある黒い気の筋を辿り、ある人物を即座に特定した。

中年の女性だった。彼女も今、他の道術者たちと同様に驚きの声を上げ、叫んでいた。そのパフォーマンスは実に見事だったが、私にはこの女性の全身が黒い気に包まれ、その黒い筋が直接出稼ぎ労...