章 100

馬車は男の嗄れた声での制止にもかかわらず停止せず、その人物を避けてゆっくりと進み続けた。

沈逸之は一晩中眠れず、傷を抱えていたこともあって頭がズキズキと痛んでいた。馬車が止まらないのを見て、頭に血が上った彼は馬車の前に立ちはだかった。

幸い御者の反応が素早かったため、大事には至らなかった。

流紗は慣性で投げ出されそうになり、顔を引き締めて尋ねた。「何があったの?公主様は止まらないとおっしゃったはずよ」

御者は高い馬の下に立ちはだかる人物を恨めしそうに見つめながら言った。「流紗様、駙馬様が突然馬の前に飛び出してきたのです…」

冷蘭之は唇の端をかすかに上げた。

この男、こんなにも我慢でき...