章 654

俺は喧嘩は得意じゃないが、心理戦となると、老林は間違いなく達人級だ。

「どんな狡猾な狐でも猟師の手からは逃れられないものさ。彼は深く身を隠したつもりだろうが、残した足跡があまりにも多すぎた。我々はそれらの手がかりを頼りに彼を特定したんだ。古今東西、どれほどの英雄豪傑も情に絡めとられる。彼も例外じゃない」

わざと得意げな表情を浮かべて言った。

彼の顔色が一気に険しくなった。「俺は何度もあいつに、あの腐れ女を諦めろと忠告したんだ。くそっ、聞く耳持たなかった。捕まったとしても自業自得だ」

「それは主人に対する態度としては、いかがなものかな」

「あいつが俺の言うことを聞いていれば、とっくにお...