章 294

「ねえ、好きだ!馬鹿な聖女のお前が好きなんだ!」

「どうして私のことが好きなの?私のことを馬鹿だって言ったじゃない?」

「お前が馬鹿だからこそ、俺がしっかり守ってやりたいんだよ。そして精一杯愛してやりたい!それに……誰かを好きになるのに理由なんていらないだろ」朱雀は銭千に一言一句丁寧に語りかけた。自分自身に銭千を好きになった理由を問うても、答えられないだろう。おそらく、彼女のその馬鹿さが人の心を揺さぶるからなのかもしれない。

いつからだろう、彼女のすべてが気になりはじめたのは……

「私と一緒にいて、本当に後悔しないの?」銭千は朱雀の本心を何度も確かめようとした。自分は誰かの人生を台無しにしたく...