章 55

淳璟が雲良閣から出た時、まだ少し呆然としていた。彼は雲良閣の門前にぼんやりと立ち、通りには人々が行き交い、この雲良閣に出入りする人が非常に多かった。彼はまるで魂のない人形のように、人々にぶつかられ、押されるままに、無意識に動いていた。

人は誰しも執念を持ち、手放せないもの、諦めきれないものがある。

黒い夜空の下、突然雨が降り始めた。通行人たちは足早に雨宿りできる場所を探したが、淳璟だけは一人、静かに雨の中に立ち尽くし、孤独で寂しげだった。

細かい雨が急に強くなり、あっという間に彼の全身は濡れそぼち、髪が頬に貼りつき、哀れでありながらも妖艶な姿となった。

白梅が描かれた黒い油紙傘が頭上に...