章 177

一食で邪気が沸々と湧き上がり、箸を投げ出すのを必死で堪えた。

思懿の性的指向に少し問題があるだけだと思っていたし、昨日の会話では彼女の人柄も悪くないと感じていた。だが人を見かけで判断してはいけないものだ。この女は紛れもない女ならずだ!食事中、彼女は私たちの芝居のことなど頭からすっかり忘れ去り、私の暗示など一切無視して、夏とばかり話し込み、彼女に料理を取り分ける様子はまさに心を込めたものだった。両親が変に勘ぐらなかったのが幸いだ。さもなければ確実にばれていただろう。

夏も困ったものだ。思懿のことを知っていながら距離を置こうともせず、あんなに優しく微笑むなんて。私たちがこれほど長く知り合いなの...