章 1060

「おじいさん、財布はあなたを背負った時に落としてしまったかもしれません。自分で探してみてください。私はもう行きます!」

「おや、君は律儀だねぇ、せめて電話番号くらい教えてくれてもいいんじゃないかい?」

「結構です!」

私は重荷から解放されたように診療所を出ると、額に手をやった。汗でびっしょりだ!そのまま小走りに逃げるように立ち去った。

アパートの近くまで来ると、人気のない角を見つけて身を隠した。再び姿を現した時には、私は白杖を突いた盲目の男になっていた。

この時間、義姉はきっと部屋に戻っていて、私がいないことに気づき、電話も通じないから焦っているだろうか?そう考えていると、向こう側から義姉...