章 556

その日、彼が家から出てきたところで、中年の女性とばったり出くわした。見たところ、その女性は丸々と太っていて、まるでボールのようだったが、歩くのはなかなか速かった。

「あのう、おじいさん、いえいえ、ご老人、お兄さん!」中年女性は私の後ろから何度も声をかけてようやく返事を得た。

「私に声をかけているのですか?」私は尋ねた。この人は少し変わっているなと思った。

「そうですとも、あなたに声をかけてるんですよ」その人は少し息を切らしながら、私の腕をつかんだ。まるで逃げられるのを恐れているかのようだった。

私は引っ張られたくなかったが、何度か言葉を交わしても、その人は手を離そうとしなかった。

結...