章 1165

空漠としたオリンポス山の競技場内には、数人の整備担当者以外に誰もおらず、広々とした空間が静寂に包まれていた。

白い衣装に着替えたヘラが競技場の大門から入ってきた時、ハサミを手に芝生の手入れをしていた作業員たちは、すぐに彼女の姿を認めた。

オリンポス山においてヘラ女神の地位はゼウス王に次ぐものであり、彼女は普段ほとんどの時間を地上での仕事に費やし、地下都市内に姿を現すことは稀で、競技場に来ることはさらに珍しかった。

しかし作業員たちは彼女が神山の「ナンバー2」だと見分けることができ、彼女が入ってくるのを見ると、皆立ち上がって笑顔で挨拶した。「やあ、ヘラ様、今日はあの囚人に会いに来られたので...