章 1695

狼の眼

かつて楚鋭はさまざまな地名を耳にしたことがあったが、「狼の眼」という場所の名前は聞いたことがなかった。

どれほど奇妙な名前であろうと、楚鋭はそんなことを気にしていなかった。彼が知りたいのはただ、その「狼の眼」が一体どこなのかということだけだった。

しかしヘスティアは、さっきの彼の真似をして部屋の中を行ったり来たりしながら、その場所に思い至らなかった自分の鈍さを罵っていた。

焦りのあまり楚鋭はヘスティアの腕を掴み、早くその場所がどこなのか言えないのかと怒鳴った。

今回、ヘスティアは楚鋭の手を振り払うこともなく、彼が荒い言葉を吐いたことに腹を立てることもなかった。代わりに、と...