章 576

商離歌のビルとはいえ、楚錚が完全に自由に行動できるはずだった。

しかし、あの子が彼に元恋人と心を打ち明ける話をさせてくれと言ったわけではないので、無理に押し入るのも気が引けた。かといってこうして入り口に立ち尽くすのも...どっちつかずの状態は非常に居心地が悪い。

「ふん」楚某は軽く咳払いをして首を伸ばし、南詔戯雪の肩越しに部屋の中を一瞥した。那夜璀璨の姿が見えないことを確認すると、照れ笑いを浮かべながら言った。「ははは、そうだね。もう行くところだから、君たちに一言言いに来たんだ」

楚錚のその言葉を聞いて、南詔戯雪はようやく気まずさから我に返り、急いでドアを開けて脇に寄った。「あ、じゃあ中...