章 970

「アイマーラ、私のために黙って祈っていてくれ。すぐにお前の両親にお金を渡せるからな!」

ベルタシは、この「命の恩人となる金」を手に入れたことに興奮するあまり、警察官として最低限持つべき警戒心を完全に失っていた。帰宅途中ずっと後ろから車が付けていることにも気づかず、タクシーが自宅付近に到着しても妄想から覚めることはなかった。

「お客さん、指定された場所に着きましたよ」

目的地に着いたのにまだ車内でぼんやりしているベルタシを見て、タクシー運転手は不思議そうに手で座席を軽く叩き、下車を促した。

「あっ、うっかり寝てしまっていました。すみません、はは」

運転手に促されてようやく我に返ったベルタシは...