章 1166

この二キロの道のりで、夏可欣の携帯は三回鳴った。すべて夏志雄からの着信だった。何か急用があるのか、何度も何度も掛けてくる。

夏可欣は深いため息をついた後、携帯をマナーモードにして脇に放り投げた。

家に近づくと、道にはもう人影がまばらになっていた。彼女が角を曲がったとき、警察の制服を着た、身分の分からない人物が道端に立ち、彼女に向かって手を振っているのが見えた。止まれと言っているようだった。

夏可欣は一瞬動揺し、急ブレーキを踏んだ。後輪がたちまち路面を擦りながら左右に揺れた。

しかし雨で路面は滑りやすく、その人の前に来たときにも車は止まらなかった。このままではぶつかってしまうと思うと、夏...