章 32

まだ自分で化粧をするのに慣れていない私に、ママが丁寧にメイクを施してくれる。最後の仕上げとばかりにアイラインを引き終えると、ママはじっと私の顔を見た。

「完璧ね。あとはチークとマスカラを少し足して、仕上げにスプレーをかけるわ。その後は、できるだけ顔を濡らさないように気をつけるのよ」

しばらくしてママは手を止め、ドレスを汚さないようにかけていたタオルを外した。ママが数歩下がる気配がしたが、そこで動きが止まる。

何事かと尋ねようと、私はゆっくり目を開けた。手作りのバラの髪飾りで前髪を横に留めているせいで、いつものように視界を遮るものがない。だからママの顔がはっきり見えるのが、なんだか不思議な感じだ...