章 56

彼が弟さんのことを考えているんじゃないかって、つい思ってしまう。

森の中を散策しているけれど、ほとんど何も見えない。私には暗視能力がないから。幸い、アレックスにはある。だから、木々が開けて、この上なく美しい光景が現れたとき、それは一層幻想的に感じられた。

「わあ……!」思わず声が漏れた。

目の前には小川が流れている。月光が水面にきらめき、ゆっくりと流れる、ほとんど波立たない水の上に、白い輝きが踊っているかのようだ。頭上には星々、足元にはこの小川。まるで映画の中にいるみたいだと感じずにはいられない。まただ。

今回は、それが怖い映画だなんて自分に言い聞かせなかった。

アレックスは私を水辺へと導き、...