章 61

アレックスが知らないこと、それは私が彼に――そうね、カードもだけど――バースデーカップケーキも作ったってこと。ホールケーキじゃないのは、今朝の彼のあの様子を見たら、どう反応するかわからなかったから。でも、何があっても彼を大切に思っているってことを示すために、何か甘いものを、と。

だって、それは本当のことだから。彼が他の誰かと番になっていると知ったからといって、アレックスを愛するのをやめられるわけじゃない。彼が厳密には人間ではないとわかった時にも、やめられなかったのと同じように。

私たちは手を繋ぎ、黙って小川へと歩く。何が起ころうとしているのか、そして私たちそれぞれが何を諦めなければならないの...