第11章
私は素早く古いコートを羽織ると、三浦誠がカシミアのコートに袖を通すのを待ち、彼の後ろについて階下へと降りた。
ここは東都の私立医療センターであり、数歩ごとに電子ロックのゲートが設置されている。
三浦先生だけが、私を外へ連れ出すことができるのだ。
夜の帳が下りる中、大雪が降りしきり、私の古いニット帽はあっという間に白く染まった。
三浦は園芸用の小さなスコップを私に手渡し、短く告げる。
「無理はしないでくださいね」
「はい!」
冷たい空気がなぜか私の気分を高揚させ、スコップを片手に、凍りついた噴水の周りをくるりと一周してみせた。
振り返った時、不意に藤崎礼がそう遠く...
ログインして続きを読む
チャプター
1. 第1章
2. 第2章
3. 第3章
4. 第4章
5. 第5章
6. 第6章
7. 第7章
8. 第8章
9. 第9章
10. 第10章
11. 第11章
12. 第12章
13. 第13章
縮小
拡大
