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第三十章 ― ヘーゼル

ユードラと俺は、まだ狼の姿のままのルーカスを抱きかかえ、ヘーゼルの部屋へと向かった。部屋からシブルおばあちゃんが出てきて、背後のドアを閉める。彼女はヘーゼルとゼウスに昼食を届けたところだと伝え、ルーカスを受け取ろうと両手を伸ばした。

「私がこの子をキッチンへ連れて行くわ。ドリおばあちゃんが、ハンサムな坊やのために特別なごちそうを用意して待ってるから」

彼女があやすように言うと、ルーカスは嬉しそうに彼女の腕の中へ飛び込んだ。

「彼女の様子はどう?」とユードラが尋ねた。

「怯えてるし、不安で神経質になってるわ……まあ、予想通りといったところね。ゼウスはザイオンを抑...

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