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第三十四章――戦争

アルファ・バルタザールの獰猛な唸り声が夜の闇に響き渡った。重い足音がこちらへ向かってくるのが分かり、地面が揺れるのを感じる。アンブローズは歯を剥き出し、攻撃に備えて威嚇の声を上げた。怒りに燃えるヴァンパイアたちの赤い瞳が輝く。パックハウスの中にいるチップとアールは、迫りくる脅威を察知して遠吠えを上げた。

最初に念話で伝えてきたのはゼウスだった。「アレス、俺の風ではこの霧を動かせない。お前のを試してみてくれ」

小さな風の渦が巻き起こり始めたその時、母さんから念話が入った。「アレス、この霧は闇の魔術による幻影よ。実体がないの。私の風も効かないわ」

「奴は戦いを地上、こ...

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