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第29章――風の街

私たちの乗った飛行機は、午後二時にシドニーを発った。時差と東向きの飛行のせいで、二時間も飛ぶと外はもう真っ暗だった。

私のメイトは窓際のコクーン席に座っていた。機長がシートベルト着用のサインを消すと、私はベルトを外し、マイケルの元へと歩み寄った。彼が座るシートのボタンに手を伸ばし、背もたれを倒してレッグレストを上げる。マイケルは手を滑らせて、私の太ももを撫でた。私は毛布を手にすると、迎え入れるように開かれた彼の膝の上へと身を沈め、その胸に頭を預けた。

八時間後、メイトが私の髪を撫でる感触で目が覚めた。外はまだ暗く、いくつものタイムゾーンを越えてきたせいで、ひどい時差ボケ...

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