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第十九章 ― 番(つがい)

俺は彼女からカップを受け取り、口をつけずに置いた。彼女の手を取り、自分の方へ引き寄せる。首筋のくぼみに鼻をうずめ、深く息を吸い込んだ。

……何もない。彼女の香りは、俺に何の反応も引き起こさなかった。それどころか、わずかな嫌悪感すら覚えた。

視線を落とし、彼女の腕を撫でる。火花も、痺れも、熱い波も感じない。彼女には何の親しみも湧かなかった。まるで、今初めて会った赤の他人のようだ。恐怖が俺を蝕んでいく。これは、番を裏切った俺に対する女神からの罰なのだろうか?

「ほら、ベイビー、これ飲んで」

彼女はカップを持ち上げ、俺に手渡した。甘い香りのフルーツミックスを飲もうと...

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