第2章:ギャンブラー
情欲とは、なんと刺激的で奥深いものか。
情欲とは、なんと神秘的で、人の心を捉えて離さないものだろうか。
藤井謙信は力尽き、朝本ヒカリが彼の上に座ることを許した。
朝本ヒカリは唇を軽く噛みながら、藤井謙信の体の上で絶え間なく上下に動いていた。その光景に藤井謙信は呆然と見入っていた。
「この女はまるで美しい花のようだ」
「今、この瞬間、彼女は私の体の上で咲いている」
藤井謙信はそう言った。
ちょうど性愛の快感が頂点に達しようとするその時、朝本ヒカリの頭が一瞬ぼんやりした。
十四年前のあの暴風雪の前夜、彼女が初めて藤井謙信に会った時のことを思い出したのだ。
十四年前。
空は冷たく、外は一面の灰白色に包まれていた。普段は目立つ橙色の二階建ての家々も、その日は色褪せて見えた。迫り来る暴風雪が、世界全体をまるで白黒映画の一コマのように変えてしまった。
その日は北風が吹き荒れていた。
朝本勇はギャンブラーで、すべてを失った男だった。
いや、彼はすべてを失ったわけではなかった。
朝本勇にはまだ身を寄せる家があり、妻と二人の子供がいた。その時、彼の妻朝本美香はソファに横たわりながらセーターを編んでいた。家の古いテレビはもう何も映さず、画面には白い雪のようなノイズがちらついていた。悲しいことに、そのテレビは本来の役割を失い、ただのランプとして使われていた。
朝本美香の本当の楽しみは、もっと古いラジオから流れる音を聞くことだった。彼女が最も興味を持っていたのは天気予報で、それが明日の買い物のタイミングを決めるからだった。
「今夜、全国各地で暴風雪が予想されます。市民の皆様は外出にご注意ください」とラジオの天気予報が定刻に流れた。
十歳の朝本ヒカリは父親のためにパンケーキを作っていた。しかし、キッチンを探してもパンケーキの最後の仕上げに必要なハチミツが見つからなかったので、彼女は二つの通りを越えたコンビニに買いに行くことにした。
「お母さん、傘を貸してくれますか?コンビニにハチミツを買いに行きたいんです」と朝本ヒカリは小声で尋ねた。この家では、彼女の地位は非常に低かった。なぜなら、彼女はこの家の「原住民」ではなかったからだ。
「ダメよ、朝本ヒカリ。ラジオの声をちゃんと聞いた?雪よ、雨じゃないの」
朝本ヒカリはしぶしぶドアを開け、灰白色の空を見上げて、暴風雪が迫っていることを理解し、外出を諦めた。
「わかった」と彼女は無力に言った。
朝本美香はこの娘の失望には全く気にせず、彼女の手元にあるセーターの形が出来上がっていくのを喜んで見ていた。それは彼女が長男の朝本陽夏のために編んでいるものだった。
その時、ギャンブラーが帰宅した。
ギャンブラーの朝本勇は、よろめく足取りで家に入ってきた。彼はカジノで高価な赤ワインを飲み、酔い潰れて現実から逃れようとしていた。
彼はカジノでテキサスホールデムというカードゲームをしていた。朝本勇はその日、運が良く、給料日でポケットに現金がたくさん入っていたため、自信満々だった。彼はテーブルで持っている資産を1.5倍に増やした後、手を引いて帰ることにした。
しかし、朝本勇がカジノを去ろうとしたその時、魅力的な金髪のディーラーが彼をじっと見つめ、その目に引き寄せられた。彼はその視線に、去ることが臆病者や敗者と見なされるような気持ちが湧き上がった。
もちろん、それだけではなかった。朝本勇が再びテーブルに戻ることを決めたのは、一杯のワインのためだった。
ロマネ・コンティの一杯!
彼のような階層の人間が飲んだことのない名酒だった。セクシーな女ディーラーは、その美しい手でワイングラスを朝本勇の前に差し出した。彼がグラスを持ち上げようとしたその時、金髪の女は彼の胸元に身を寄せ、グラスの縁を遮った。























































