第105章

原田桐也は我に返ると、少し気まずそうに咳払いを一つし、それから微笑みを浮かべて部屋に入ってきた。

彼の他にもう一人、後に続いて安藤絵美の家へと足を踏み入れる人物がいた。

「絵美ちゃん、紹介するよ。こちらは俺の兄、原田光紀だ。昨日用事があると言ったのは、兄さんがT市に来ていたからなんだが……どうやら喧嘩の仲裁に巻き込まれたらしくてな。不運にも腕を少し切ってしまったから、急遽病院へ行っていたんだ」

原田桐也の説明を聞くと、安藤絵美は慌てて口を開いた。「光紀さん、初めまして。腕のお怪我、大丈夫ですか?」

原田光紀は安藤絵美を見て一瞬呆気にとられたが、すぐに穏やかな笑みを浮かべた。「大事ない...

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