第106章

原田光紀は多くのことを語った。ここ数年の募る想いと無念を、すべて吐き出したのだ。

二時間余りが過ぎてようやく、原田光紀は座り込んでいた墓前から身を起こした。

原田光紀は頭上を仰ぎ、空を見つめて思わず言葉を漏らす。

「楓子、君が生きていてくれたらどんなに良かったか……。たとえ俺と一緒になれなくても、せめて生きている君の姿を見ることさえできれば」

その言葉と共に、目尻を涙が伝う。だが、彼はすぐに手でそれを拭い去った。

原田桐也は沈黙したまま、墓石に嵌め込まれた白黒写真の女を見つめ、複雑な思いを抱いていた。

かつて、高藤楓子は彼にとって最も憎むべき女だった。敬愛する光紀兄さんを裏切り、...

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