第108章

「棚のどこに見る価値があるのよ?」

 安藤絵美は首を傾げながら地下室へと足を運んだ。二人のちびっ子を上へ連れ戻すつもりだった。

「ママ、あの上に変なボタンがあるよ」

 地下室に入ると、哲也が頭上の斜め向こう、ちょうど棚板の裏側あたりを指差していた。

 絵美が首を傾けてその方向を覗き込むと、確かに壁と同色の白いボタンがあった。

 わずかな突起で、注意深く見なければ塗装のムラにしか見えないだろう。

 どうして自分は子供の頃に気づかなかったのだろう、と彼女は思う。

 だが、微かな記憶が蘇る。かつて母に抱かれてこの地下室に来た時、設置されたばかりのこの棚を見つめ、「これはとても重要な棚...

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