第116章

原田久恵は、あまりの怒りに血を吐きそうになった。

「安藤絵美」という女……見た目は愛想がよくて可愛らしいのに、まさかこれほど腹黒いとは。

父に口添えさえしてくれれば済む話ではないか。「桐也」は一体どんな魔法をかけられたというのか。どこの馬の骨とも知れないガキ二人を、あそこまで庇うなんて。

「お母さん、まさか私のことまで見捨てるつもりなの?」

久恵は立ち上がろうともせず、膝行して原田夫人のほうへ向き直った。目尻から涙がこぼれ落ち、その姿はいかにも哀れを誘うものだった。

原田夫人は娘のそんな様子を見て、深く重い溜息をついた。

「悪いことは悪いのです。お前が私の娘でも、『伽奈』が孫娘で...

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